高速に近づく 加速する鯨は水ではなく 音の中を泳ぎ 音を切る
優雅ではなく 何かを叩きつけるかのように激しく強く 行き先を目指す
辿り着くは沈黙
音のない世界を夢見るその一頭の鯨は、
周りからは人付き合いの悪い孤独で寂しい鯨だと言われた
しかし周りのそんな雑音もその鯨にとっては雑音とも呼べない雑音
本当の音を聴く者には、次第に超人的な能力が生まれる
自らが意識していないところで自然と体が音を聴き分け
本当の音が聴こえる方にだけへと向かえる
鯨自身は行き先など分からず、
様々に方向を変えて突き進んでいるつもりなのだが、
周りから見るとそれは永遠的に直線で、
小さな魚たちやプランクトンの間では
その鯨が進んでく回路のことを
” 音のトンネル ” と呼んでいる
そのトンネルは水の色でもなければ、
白でもなく透明でもない何とも美しい光の色をしている
そして何故かそこだけは、
時間が止まっている感覚になりそうな程、 一切の音が聞こえずいわゆる、
沈黙が存在していた
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